製麺所が見たラーメン&麺のトレンドと地域性
2019.10.31

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ラーメンブームが起こり、ラーメン戦国時代なんて言われるラーメン業界ですが、常に何かしらのブームが起こってさらに新しいジャンルが生まれたり進化したりしています。
私はそもそもラーメンが好きです。そして仕事柄たくさんのラーメンに触れてきて、製麺所として常にトレンドや新しいものに対応してきました。
そこで今回は【麺屋から見るラーメン業界】というテーマでお話ししていきたいと思います!


人気店が巨大ブームを巻き起こす!


麺のトレンドや変遷は、基本的に人気店の発信によって動いてきました。
ラーメン店のみんながみんなオリジナルのラーメンをつくっているのではなく、新しいジャンルのラーメンが人気になったりブームになると多くのお店がそれを追いかけるという感じです。
いわゆる『スター』の店舗のラーメンを目指していて、製麺所もそれにフィットする所や人気のある製麺所さんに注文するお店が増える印象です。
例えば二郎系は本店があって、そこを目指してブームが起こり進化したり変化したりしたわけですよね。
良いとか悪いということではなくて、人間界にスターと呼ばれる人がいるようにラーメン界にもスター的な存在が常にいて、ラーメン業界を動かすもとになっているのだと思います。

麺の需要に製麺所も付いていく

トレンドやブームが生まれる流れをご紹介しましたが、それにともなってラーメンの麺の需要も変わってきました。
そもそも、つけ麺やまぜそばといった太めのもっちり麺や歯ごたえ系の麺は昔はあまり見かけなかったはず。いわゆる普通の中華麺というのが、私たちが作っている麺の中心だったんです。
太陽食品の製麺所も昔は中華そばの細い中華麺を作っていましたが、太い麺や加水率の違う麺、歯ごたえや風味が違う麺などお客様が求める麺が変わってきたことでそれに対応できるように工夫したり設備を整えてきました。
美味しく、楽しく、面白く進化してきたラーメンに合わせて製麺所の作る麺が変わってきたという推移があります。

粉のこだわりにも対応

ラーメンの麺に使う粉は産地や種類、ブランドなど好まれるポイントやこだわりによって変えることができますが、粉のブレンドというのも新しく求められるようになってきました。
昔は1種類の粉だけで色々な種類の麺を作っていたようですが、今は粉をブレンドした麺を求めている店主さんやオーナーさんもいます。
国内産の粉から外国産の粉まで種類は本当にたくさんあって、製麺所もラーメン屋さんがほしい麺を作るために2、3種類の粉をミックスした麺を作っています。

普遍的な麺も確かにあります!


ラーメンは多種多様に進化して麺の種類もどんどん増えてきました。
しかし!ずっと変わらないずっと昔から愛されている麺もあります。新しいものが出てきても、消えることなく注文されている麺もちゃんとあるんです。
開業してからずーっと同じ麺を注文してくださるお店があって、そういうお店は変わらない味を提供し続けているのだと思います。
ずっと変わらないから好き。というエンドユーザーの実際にラーメンを食べにきてくれるお客さんがいて、たまに食べに行った時や例えば帰省で久しぶりに食べに来たお客さんが「懐かしいなぁ」「ほっとする」と思ってくれることに価値があるんですよね。
昔ながらの麺は発注の数が少なくなったりする事もありますが、ずっと変わらずにその麺を使いたいと思ってくださるお店がある限りは作り続けたいと思っています。

バランスの良い麺を提案します

トレンドや新しい挑戦をしたいという方もいると思いますが、私たちはまずスープと相性の良い麺をご提案しています。
醤油であってもパイタンであっても、スープの種類とその濃度に合わせて麺をご紹介するという方法です。
ラーメンにはやはりバランスがあって、こってりしたスープには太めの麺、あっさり系には細い麺などスープとの相性が重要になります。
こってり系に細麺を合わせるとスープが強すぎますし、あっさりスープに太麺を合わせると麺ばっかりが強くなってしまいますよね。
スープと麺のアンバランスな感じを求めている方もいらっしゃいますが、まずはスープとバランスの良い麺をご提案するのが基本です。

地域によって麺の好みがバラバラ!?


日本全国のラーメン屋さんに伺っていると、麺の好みがきれいに分かれているという事がとてもよくわかります。本当に地域によって好かれる麺が違うんです!
例えば東京で醤油系のラーメンをやるなら大抵使われている麺があります。仙台で醤油ラーメンの店を始めるから麺を頼みたいと言われて、東京で人気のある定番の麺を持って行ってご提案しました。でも、この麺は断られてしまいます。ほぼほぼ必ずと言っていいくらい、断られてしまうんです。

東北方面は多加水もっちり麺が好き

東京から関東地方で好まれて人気のある麺は東北方面ではあまり好まれません。
同じような似たスープを使ったラーメンだとしても「これはちがう」といって断られる傾向が強いです。
東北地方では割と太めでもっちりとした麺が好まれていて、多加水の麺がよく使われています。

九州は低加水の麺が好まれる

多加水のもっちり麺が好まれる東北地方に対して、九州では真逆の低加水のしっかりめの麺が圧倒的に好まれます。
博多とんこつなど、九州のラーメンの麺は確かにそういう麺ですよね。
ラーメンは確かに硬めの麺だよな〜と思えるんですが、つけめんで地域のギャップを強く感じたことがあります。
鹿児島のお客様だったんですが、つけめんをやりたいというお話だったので通常使っているつけめんの麺を持って行きました。
ですが「これは柔らかいから、もっと硬くしてほしい」と言われたんです。
それまでつけめんの麺は『もっちり系』か『歯ごたえ系』だと思っていたんですが、地域によって違うんだなぁとしみじみ感じました…。
九州では硬くて風味が強い麺が好まれるというのがダイレクトにわかりました。

愛知は独特な文化が根付いた場所

愛知県では「すがきや」さんが有名で、昔から中華料理組合というのもありました。
私たちの製麺所も中華料理組合に入っているお店に麺を卸していて、愛知ではあまり新しいラーメンを受け入れるという雰囲気が無かったと思います。
今はそんな愛知県でラーメンブームが起こって多種多様なラーメンのお店ができましたが、全国展開している大手ラーメンチェーンが東海地方の中で愛知にだけ出店しないというような事も…
地方性や県民性でこんなにも違いがあるというのは、とても面白いと思います。

加水率で麺は激変する!


『加水率』というのはラーメンの麺の話になると必ずと言っていいほど出てくるワードだと思います。
この加水率、本当にそんなに変わるのか?というと、劇的に変わります!
加水率が0.5%変わるだけで違いがわかるくらいに麺に影響するのが加水率なんです。

条件が変われば加水率の変化も変わる

加水率で麺がかなり変わりますが、製麺には様々な要素が関わり合っているというのは忘れてはいけないポイントです。
同じ小麦粉で同じ条件で製麺する時に加水率を変えればすぐに違いがわかりますが、粉によって水の入りやすさは異なります。
なので小麦粉Aと小麦粉Bの加水率が同じ麺を作ったら、全く違う麺になります。これは麺というのは加水率だけではなくて小麦粉の性質によって違うものになるということ。
製麺所でも粉の選定を間違えると全く違う麺ができてしまいます。

0.5%の違いが本当にわかるのか?

加水率が0.5%変わるだけで全然違う麺になる!とお話ししましたが、この0.5%の違いは、特に麺を茹でた時に食感や風味の違いとして感じられます。
今のラーメン屋さんは色々と勉強されて舌も肥えてらっしゃるので、0.5%の違いも敏感に感じ取って「もう少し変えたいな」とコンマ数%の単位で調整する方もたくさんいます。

加水にも限界値がある

加水率にも限度があります。
例えば我々のような製麺所でつくるのなら、最大で40%〜45%くらい。それ以上になると生地がゴムみたいな感じになってしまうので、製麺機が壊れる可能性があります。
では加水の下限は?というと26%が最低ラインかなと思います。
製麺の際に粉などの材料をミキサーで混ぜて練った後で生地を薄く長く伸ばして『麺帯』というものにしますが、この時に材料がまとまらず伸ばすことができなければ麺にすることができません。
なので私たちの製麺所では26%くらいが限度ではないかと考えています。

売れるラーメン屋の特徴


麺を発注いただくお客様だけでなく、様々な業種の方とお付き合いがありますが、『売れる店はどんな店?』と聞かれると共通して「目先の売り上げしか見ない所は長続きしない」ということが言えると思います。
当たり前といえば当たり前ですが、お客さんやその他の会社を見ることができるというのはとても大事なことだと思います。

お客様を見ることができている

仕事をする上で、お店をやる上で、お客様と向き合っていくというのは大きなやりがいの1つだと思います。
ですが目先の売り上げだけを見ていると、お客さんのことは見えなくなりますよね。お客さんのことを考えないで自分のことばかりを優先するとすぐにわかりますし、私たちのような業者に対しても雑な対応をされる方が多いと感じます。
一業者である私たちにも優しく丁寧に接してくださるお客様は、お店に食べに来てくれるお客様に対しても親身になって大切にしているなと思うんです。
それが最初から目先の利益ばかり見ていると長続きしないという理由ではないでしょうか。

毎日自分のラーメンを食べている

麺に限らずどんな食材でも同じですが、毎日同じに仕入れている材料でも毎日同じものが来るわけではありません。
私たちの製麺所の麺ももちろんブレのないように作っていますが、どんなにこだわって作ったとしても多少のブレは避けられないと思うんです。これはどこの製麺所さんでも同じに言えること。
安定して工場で作っている麺ですら多かれ少なかれブレが出るということは、スープも野菜も毎日違ったものが入ってきて、違うものに仕上がると思うんです。
なので、店主さんには毎日営業前に自分の店のラーメンを作って食べて「今日は麺が硬いから10秒長く茹でたらちょうど良いな」「タレの塩気が強いから少なめにしよう」という風に確認して調整することを是非オススメしたいです。
食べにきてくれたお客様は「麺硬いな〜」「しょっぱいな〜」ということが増えれば離れていってしまうので、毎日オープン前に丸っと一杯のラーメンを作って食べるのは大事なことかなと思います。
実際にオープン前に店長だけでなくスタッフ全員でラーメンを一杯ずつ食べてるお店もあります。そういった徹底した姿勢が売れるお店に繋がるのではないでしょうか。

製麺所もラーメンと一緒に進化します!

製麺所視点のラーメントレンドや変化についてご紹介してきましたが、ラーメンが変わっていくならば製麺所もそれについていけるように努力が必要だと思っています。
今まで新しいラーメンが登場したり流行りやブームが起こる度に製麺所もニーズに応えられるように変化してきました。
これからもラーメンの美味しさや面白さを作っていけるように頑張ります!